
唐突ですが、みなさん「ちいかわ」はお好きですか? 我が家では奥さんがハマってしまい、あちこちにある「ちいかわショップ」を訪れては、大量のグッズを購入しています。「ちいかわ」って、単に可愛い癒し系のキャラクターだろうと思ったら・・・その作品世界は意外にシュール! 現代の若者たちを取り巻く、厳しい社会の現実が作品に投影されているように思えるのです。
これはきっと、作者の意図があるに違いない! と思ったので、広告代理店で30年にわたってマーケティング・プランナー職を務めた経験を持つ私が、「ちいかわ」のシュールな作品世界について分析したいと思います。
※タイトル画像は著作権侵害にならないよう、AIで作成しました。
シュール1 非正規労働
まず、「ちいかわ」がポケモンやディズニーのキャラクターと大きく違うのは、キャラクターが労働を強いられる!という点です。彼らは生活のために、「草むしり」「討伐」といったメニューのアルバイトをせねばなりません。しかも正社員はおらず、全てのキャラクターがアルバイト=非正規労働者です。最近の日本の若者が置かれた立場と「ちいかわ」の生活境遇が、何やら重ね合わせられているように思えます。
ちいかわのアルバイトにはランクがあり、試験によって進級します。「草むしり」バイトは5級から資格があるようで・・・
この資格や労働成果に応じて報酬があります。空想世界のキャラクターという立場なのに、「働かないと生活できない」設定がされているのは、なんともシュールじゃないでしょうか?
そして、そんなアルバイターのトップに君臨するのが「スーパーアルバイター」です。大変難しい資格・・・という設定で、「ちいかわ」原作においては、沖縄キャラの「シーサー」だけが、この資格を持っています。
シーサーの仕事は、ラーメン屋「郎」の調理スタッフ。店名とL字型のカウンターが、「二郎」のオマージュであることを示しています。私自身も三田本店・目黒・品川の二郎によく行った!ので懐かしいです。店構えからは、看板の「黄色」だけが僅かに二郎を想起させます。
シュール2 所得格差
さて、「ちいかわのシュール」2つ目のは「所得格差」です。ちいかわのアルバイトや収入の設定については先ほど書きましたが、個々のキャラクターにあえて貧富の差をつけて描き、リアルな現実として格差を示しているんです。ディズニーだったら? 「ミッキーはお金持ちだけど、ドナルドダックは貧困」なんて設定は無いですよね(笑)。
そんな「ちいかわ」の格差社会の中で、最も貧しいキャラクターがこちらの「ハチワレ」です。家は扉のない洞窟で、机は段ボール箱、茶碗にはヒビが入っています。そんな状況でも明るくポジティブに、友達を気遣いながら生きる姿が泣かせます。
ちなみに調べてみたところ、20代前半の日本の若者の平均収入は267万円。手取りはここからさらに削られます。都心で一人暮らししたら?おそらく手元にはほとんど残らないんじゃないでしょうか? こうした生活の厳しさが、最近の日本の若者の生活と重ね合わせられているように思えるんです。
▼三菱UFJ銀行記事「日本の平均年収は?」
https://www.bk.mufg.jp/column/others/b0077.html
シュール3 管理社会
そんな「ちいかわ」たちを管理(支配?)しているのは、「ヨロイ」という名の、ちょっと強面(こわもて)のキャラクターたちです。ヨロイは高圧的な態度を見せることは無いのですが、ご覧の通り表情もなく、やたら歯茎が目立つオジサンキャラ。そんなヨロイたちが、ちいかわ達に仕事を指示し、報酬を与えています。
何やらこの構図・・・ちいかわは「現代の管理社会に拘束されている若者たち」で、ヨロイは「管理側の大人たち」を投影して描かれているように思えるのです。作者のナガノさんは、管理社会に搾取されながら生きる若者たちの苦しい現実を、「風刺」という視点で描きたかったんじゃないか?と感じました。
「なんとかなれーッ!」が示す若者の閉塞感
キャラクターの「ハチワレ」が、作品中で何度か叫ぶ言葉「なんとかなれーッ」が、そんな現代の若者の閉塞感を示唆しているように思えます。若者なんだから、本来なら「自分でなんとかするぞ!」というポジティブな宣言になるべきでしょうが、管理社会に慣らされてしまった現代の若者には「どんなに頑張っても世の中を変えられるわけがない」という諦めの気持ちがあるかも知れません。自分の力で何とかできない若者は、もはや受け身で「何とかなれーっ!」と願うしかないわけです。
以上ご覧いただいたように、「ちいかわ」のキャラクターは「弱い立場」である点が、現代の若者と設定が似ています。今の若者たちは、経済的にも体力的にも、精神的にも追い詰められていないでしょうか?多くの若者や独身女性が「ちいかわ」に共感するのは、背景にそんな理由があるのではないか?と思えるのです。