
こんにちは。みなさんは「MICE(マイス)」って言葉、聞いたことありますか? ビジネスイベントに関わっている方ならよくご存知でしょうが、一般には聞き慣れない言葉だと思います。
そこで今回は、近年ビジネスの場で、ますます注目されている「MICE」について、「聞いたことはあるけれど、意味はよくわからない」と思っていらっしゃる方に向け、基本から具体事例、最新の事情をご紹介していきます。
MICEとは何か? その基本的な意味と構成
MICEとは、4つのビジネスイベントの総称
「MICE」とは、ビジネス目的の大型イベントを包括的に指す言葉で、以下の4つの頭文字を組み合わせた造語です。
M: Meeting I: Incentive C: Convention E: Exhibition / Event
MICEの構成要素とその意味
それぞれの要素には、以下のような特徴があります。
Meeting(会議)
企業や団体が実施する会議・セミナー。小規模から大規模まで幅広く、情報共有や意思決定の場となります。
Incentive(報奨・招待旅行)
優良顧客や業績の良い販売店などに対する報奨。参加者のロイヤリティ強化やモチベーション向上が目的です。
Convention(大会・国際会議)
業界や学会が主催する大規模な国際会議。数百人〜数千人単位で開催され、知見の共有や人的交流が進みます。
Exhibition / Event(展示会・見本市)
製品やサービスの展示・商談を行う場。企業の新規顧客獲得やビジネスマッチングの機会として重要です。
なぜ今、MICEが注目されているのか?
MICEが注目される理由のひとつは、その経済波及効果の大きさです。参加者は一般観光客よりも長期滞在し、宿泊・飲食・交通・観光など地域経済への支出が高くなる傾向があります。
また、MICEの誘致は都市ブランドの向上にも直結します。国際会議や展示会を通じて、地域の認知度が高まり、インフラ整備や雇用創出などの副次的効果も期待できます。
こうした背景から、国や自治体はMICEを戦略的に誘致・支援しており、地域振興にも役立つビジネスの成長分野として注視されています。

MICEにおける展示会の位置づけ
展示会は見込み客と直接接触できる有効な手段
MICEの中でも「Exhibition(展示会)」は、製品やサービスを来場者(見込み客)に直接見てもらえる貴重な場であり、リード獲得・商談・ブランド認知といったビジネスの成長に直結するイベントです。
展示会単体でも大きな集客力がありますが、他のMICE要素と組み合わせることで、より強いシナジーを生み出します。たとえば、展示会と同時にセミナー(Meeting)やカンファレンス(Convention)を開催することで、より効果的に見込み客の抽出が可能になります。
展示会のメリットとは?
展示会出展には、以下のようなメリットがあります。
高い来場者の質
来場者は、明確な目的や決定権を持つビジネスパーソンが多く、単なる観覧ではなく商談や情報収集を目的にしているため、成約率が高くなります。
複合型イベントによる集客強化
展示+講演+ネットワーキングを組み合わせた設計により、より多くの業界関係者を集めることが可能です。
メディアやパートナー企業との連携
同時開催されるイベントや交流の場で、新たなビジネスパートナーやメディア露出の機会が得られます。
展示会は単に「製品を見せる場」ではない
展示会は、単にブースを出して製品を並べるだけのイベントではありません。出展企業は「知ってもらう」だけでなく、「体験してもらう」「議論してもらう」「共感してもらう」ことが可能になります。たとえば、
・製品カンファレンスやワークショップをブース内で実施する
・招待制のミニセミナーを開催する
など、単体の展示会では実現しにくい、国内外の質の高い見込み客に対して、多面的なアプローチが可能になるのが、MICEに内包される展示会の大きな強みです。

MICEの具体的な国内外の成功例
日本国内で注目されるMICE開催地
まずは日本国内の代表的なMICE開催地をおさらいしておきましょう。
【Aichi Sky Expo】愛知
中部国際空港直結の展示施設。製造業や先端技術分野の展示会が数多く開催され、アクセスの良さから国際イベントの誘致も増加中。
【東京ビッグサイト・東京国際フォーラム】東京
多様な分野のMICEが集まる日本最大級のMICE集積地。国際性・宿泊施設・交通の利便性が揃っており、業種を問わず注目されています。
福岡・沖縄・金沢など地方都市
独自の文化や観光資源を活かしたインセンティブ型のMICEが活発。地域振興とビジネス誘致を両立する新しいモデルが広がりつつあります。
海外の成功事例: World MICE Awardsについて
「World MICE Awards(ワールド・マイス・アワード)」は、世界中のMICE施設・運営企業・観光局を対象にした国際的なアワードです。MICE業界の「オスカー」とも呼ばれ、ホスピタリティ、施設の利便性、国際性、革新性などをもとに選出されます。
このアワードを受賞した施設や都市は、世界から注目を集め、国際会議や展示会の開催地としての価値が高まります。以下に、受賞歴のある主要なMICE施設・都市と、その成功の背景をご紹介します。
【Best MICE Destination】ドバイ(UAE)
ドバイは数年連続で「中東最優秀MICEデスティネーション」に選出。「Dubai World Trade Centre(DWTC)」を中心に、国際展示会・フォーラム・ビジネスカンファレンスが年間500件以上開催されています。
成功要因 ・世界中からアクセスしやすいハブ空港(DXB)
・豪華ホテルや会場設備の充実
・政府による積極的なMICE誘致政策
・エンターテインメント性の高い観光資源(砂漠ツアーなど)
✴︎注目イベント:GITEX(世界最大級のIT展示会)
【Best Convention Centre】バンコク国際貿易展示場(タイ)
「Bangkok International Trade and Exhibition Centre(BITEC)」は、東南アジアの物流拠点とMICEの融合に成功しています。
成功要因 ・ASEAN地域との経済連携を背景とした交流ニーズ
・ローカル+国際要素を両立した展示スタイル
・現地企業とグローバル企業が共演できる展示モデル
✴︎注目イベント:METALEX(ASEAN最大の金属加工機器および工作機械展示会)
【Best MICE Hotel】マリーナ・ベイ・サンズ(シンガポール)
MICEと観光・エンターテインメントを融合させた代表例。ラグジュアリーホテルと国際会議場が一体化した都市型モデルです。
成功要因 ・都市全体が「1つのMICE会場」のように設計
・海外ビジター向けのサービス力と交通利便性
・展望台や巨大ショッピングモールなど、観光+ビジネス両立
✴︎注目イベント:Singapore Fintech Festival(世界最大の金融テックイベント)
海外成功事例から学べること
これらの成功事例に共通するポイントは以下の通りです。
1. アクセスと滞在の快適性を重視していること
2. 会議・展示・観光・宿泊をワンストップで提供できること
3. 都市・国全体でMICEを推進する姿勢が明確であること
4. 業界特化型の国際イベントを継続開催し、ブランド化していること

MICEを活用した企業戦略とは?
MICEは企業成長の戦略的ツール
MICEは、自治体や観光業だけでなく、民間企業にとっても強力なマーケティング・ブランディングツールとして活用されています。特に展示会や国際会議を通じて、企業は下記のような具体的な成果を得ることができます。
・質の高い新規リード(見込み顧客)の獲得
・製品・サービスのグローバルな認知度アップ
・社会的信頼性の構築(展示=実績と見なされる)
・高度人材への採用ブランディング(企業文化や理念の発信)
中小企業こそMICEを活用すべき理由
大手企業に限らず、中小企業でもMICEを活用する動きが活発化しています。特に以下のような場面で、高い成果を上げています。
・技術力や実績をビジュアルで表現し、信頼感を獲得
・対面での商談機会を創出し、短期間で成約につなげる
・展示会連動で工場見学やセミナー開催し、理解を深める
ブースやコンテンツ設計も「戦略」のひとつ
MICEの効果を最大化するためには、出展の“見せ方”も戦略的に考える必要があります。
・ブランドコンセプトが伝わるブースデザイン
・人が集まりやすい動線設計とプレゼンのタイミング
・インセンティブを活かしたノベルティや交流機会の設計
・SNSや動画を活用した会期前後の情報発信

今後のMICEの展望と注目トレンド
MICEの未来は“体験”と“テクノロジー”の融合へ
コロナ禍を経て、一時はリアルイベントの開催が制限されたMICE業界。しかし2023年以降、国内外でのMICE需要は急回復しています。そのなかで注目されているのが、「体験価値の強化」と「デジタル技術との融合」です。
■ ハイブリッド型MICEの普及
オンラインとオフラインを組み合わせた“ハイブリッドMICE”が主流に。会場参加者とリモート視聴者が同時にイベントを楽しめる設計が求められています。
■ 展示体験のデジタル化
VRブースやARプレゼン、オンライン商談システムなどが展示会で導入され、より没入感のある体験が実現。来場者の興味・関心を可視化する技術も登場しています。
インバウンド戦略とMICEの連動
日本では観光庁が掲げる「観光立国」の一環として、MICEとインバウンド(訪日外国人旅行)を連動させる取り組みも進んでいます。展示会・国際会議のために訪日するビジネス客が、観光・グルメ・文化体験を楽しむことで、消費拡大と地域経済の活性化を同時に実現できるのです。
地方都市がMICEで差別化を図る時代へ
これまでは東京・大阪といった大都市にMICEイベントが集中していましたが、現在は地方都市が独自の強みを活かし、MICE誘致を強化しています。たとえば、以下のようなMICE拠点があります。
・愛知県常滑市:「Aichi Sky Expo」は、中部国際空港を軸にした産業系MICEの拠点化
・沖縄県那覇市:「沖縄コンベンションセンター・万国津梁館」は、リゾート地と国際会議を融合

まとめ:MICEの活用がビジネスと地域の未来を拓く
MICEとは、会議・報奨旅行・国際会議・展示会を組み合わせた、ビジネスと地域経済の活性化に欠かせないフレームワークです。とくに展示会は、製品やサービスを直接アピールできる貴重な場であり、他の要素と連携することでさらなる効果が期待できます。
愛知県のAichi Sky ExpoをはじめとしたMICE施設では、展示・会議・商談・ネットワーキングを融合したイベントが続々と開催され、企業のマーケティングや地域ブランディングに貢献しています。
また、MICEは観光やインバウンドと連携しやすく、地方都市が独自の魅力で差別化する時代に入りました。ハイブリッド化やデジタル技術との融合も進み、MICEの可能性は今後さらに広がっていくでしょう。
単なるイベントとしてではなく、戦略的な成長エンジンとしてMICEを活用することが、企業にも地域にも新たな価値をもたらす鍵となります。