
こんにちは。ここ数年、SDG’sをテーマとした企業活動を目にしたことのある方は、多くいらっしゃることと思います。
サスティナブルな企業であることの重要性は、急速に社会全体に浸透しているように見受けられます。
しかし、ブランド戦略に十分に反映している企業がどれだけあるかというと?日本国内にはまだ少ないように感じます。
今回は、製造業にとって重要になるであろう『サステナブルなブランド戦略』について、お話したい思います。
サステナブルなブランド戦略が求められる背景
サステナビリティが、今や世界中の企業活動において、中心的なテーマとなっています。
この変化の背景には、消費者意識の変化と国際的な規制強化の双方からの影響があります。
特に製造業は今、環境負荷が高い産業として、従来の大量生産・大量消費型モデルの見直しを迫られています。
環境問題に配慮したブランド戦略を構築することは、単なるトレンド対応ではなく、競争優位性を築くカギとなっています。
たとえば、欧州連合(EU)をはじめとした先進国では、カーボンニュートラルを目指した厳しい政策が次々と導入されており、製造業にも具体的な目標達成が求められています。
このような規制は、一見すると企業への負担に思えますが、同時に競争力を高める絶好の機会でもあります。
信頼性の高いサステナブルなブランド戦略は、顧客の共感を呼び、長期的な価値を創出する重要な要素です。

サステナブルなデザインの重要性
サステナブルなブランド戦略を成功させる上で、デザインは重要な役割を果たします。
企業の価値観や信頼感を視覚的に伝えるツールとして、Webデザインやグラフィックデザイン、さらには展示ブースのデザインが注目されています。
これらのデザインを通じて、製品やサービスの背景にある「環境配慮」や「持続可能性」を訴求することで、消費者や取引先の共感を引き出すことが大切です。
たとえば、Webデザインでは、シンプルかつ直感的なナビゲーションを採用し、再生可能エネルギーを使用していることや、エコフレンドリーな製品をエビデンスとともにわかりやすく紹介することが効果的です。
また、グラフィックデザインにおいても、リサイクル素材をテーマにしたビジュアルや自然を連想させる色使い(例:緑やアースカラー)を取り入れるなどして、環境配慮に対するブランドメッセージを効果的に伝えられます。
さらに、展示ブースでは、ゴミを出さない仕組み「ゼロ・ウェイスト」のデザインや、「リユース・再資源化」に配慮し、木材やリサイクル素材を使用した設計などが注目されています。
今後は、こうした情報発信を継続し、企業のサステナビリティへの取り組みを具体的に示し、顧客にポジティブな印象を与え続けることがますます重要になっていくでしょう。
そして、その際の顧客との接点に対するデザインは、企業のブランド価値を高めるだけでなく、消費者との信頼関係を築く大きな力となります。

製造業が活用すべきサステナブルな手法
サステナブルなブランド戦略を実現するには、製造業が具体的な手法を活用することが不可欠です。
その一つが、「1. 循環型経済」を意識したプロダクトデザインです。
製品の設計段階からリサイクルや再利用を考慮することで、廃棄物の削減や資源の有効活用が可能になります。
たとえば、モジュール型の製品は、必要な部分のみを交換・修理できるため、製品全体を廃棄せずに済む仕組みを提供します。

また、「2. 再生可能エネルギー」を取り入れた工場設計も有効です。
太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーを積極的に活用することで、製造プロセス全体の二酸化炭素排出量を削減できます。
さらに、一部の企業では、工場運営の電力を100%再生可能エネルギーで賄うことに成功しており、その結果、製品の環境負荷が大幅に軽減されています。

さらに、「3. エシカルサプライチェーン」の構築も重要なポイントです。(エシカル〈ethical〉とは、英語で「倫理的な」「道徳的な」という意味の形容詞です)
サプライヤーの選定において、公正な労働環境の提供や、環境負荷の低い素材の使用を重視することで、社会的責任を果たすことができます。
一部のスタートアップはESGを優先事項に掲げ、成熟し複雑なサプライチェーンを持つ大手の競合他社に対する重要な差別化要因として、エシカルな調達を推進しています。

また、「4. 輸送プロセスの最適化」による排出ガス削減なども、サステナブルな取り組みの一環です。
現在では、輸送プロセスの最適化には、AIやシミュレーション、動態管理などの技術が活用されています。
こうした努力をブランド戦略に組み込むことで、消費者や取引先の共感を得るだけでなく、競争力のある製造業の未来を切り開くことが可能です。

BtoB製造業の成功事例
AGC(旧・旭硝子)
AGCは、ガラスや化学品、電子材料を製造する日本を代表するBtoB企業で、サステナブルな取り組みを積極的に推進しています。同社は、「環境配慮型製品」の開発を戦略の中心に据えています。たとえば、建築用の高性能断熱ガラスは、建物のエネルギー効率を大幅に向上させるため、温暖化対策として世界的に注目されています。
また、製造プロセスにおいても、温室効果ガス排出量を削減する技術を導入。2021年には、日本国内での初となる「水素を燃料に利用したガラス製造プロジェクト」を開始し、化石燃料に依存しない製造プロセスを実現する取り組みを進めています。これらの活動は、BtoBのクライアントに対しても信頼を与え、長期的なパートナーシップを構築するうえで大きな役割を果たしています。

コマツ(KOMATSU)
建設機械メーカーのコマツは、BtoB市場でのサステナブルな取り組みを先駆けて行っています。同社は、電動建設機械やハイブリッド式建設機械を開発し、建設現場での二酸化炭素排出量を削減しています。さらに、これらの製品には、AIとIoTを活用した運用効率化技術が組み込まれており、燃料消費の最適化を図っています。
加えて、「再生コンポーネント事業」により、使用済み部品の再利用を推進。これにより、廃棄物削減と資源効率の向上を実現しています。同社のこうした取り組みは、建設業界全体におけるサステナビリティを加速させるモデルケースとして注目されています。

三菱ケミカルグループ
三菱ケミカルグループは、化学産業を牽引するBtoB企業として、サステナブルな素材開発を進めています。同社は、生分解性プラスチック「BioPBS」や、リサイクル可能な高性能樹脂など、環境負荷を軽減する製品を積極的に開発しています。また、プラスチック廃棄物のリサイクル技術を強化し、循環型経済の実現を目指しています。
製造プロセスでも、再生可能エネルギーの導入や二酸化炭素の回収・再利用技術の活用を推進。これらの取り組みは、サプライチェーン全体での環境負荷削減に寄与し、BtoBの取引先企業からも高い評価を得ています。

サステナブル戦略を定着させるためのポイント
サステナブルなブランド戦略を長期的に成功させるには、企業文化として定着させることが重要です。そのためには、以下の3つのポイントを押さえる必要があります。
1. 社員教育と意識改革
社員一人ひとりがサステナビリティを理解し、実行できるようにすることが不可欠です。全社的な目標を設定し、達成状況を共有する仕組みを導入することで、サステナブルな考え方が社内文化として浸透します。さらに、定期的な研修やワークショップを開催し、サステナビリティに関する最新情報やベストプラクティスを共有することも効果的です。
2. 消費者への透明性の確保
消費者に対して取り組みを透明に示すことは、信頼を得るために不可欠です。製品の生産プロセスや素材の由来に関する情報を公開し、具体的な取り組みを示すことで、消費者の共感を呼びます。たとえば、製品のカーボンフットプリントを明示したり、サステナビリティに関する年次報告書を発行することが効果的です。
3. 持続的な評価と改善プロセスの導入
サステナブルな取り組みを継続的に進化させるには、評価と改善のサイクルを確立することが重要です。環境目標や社会的責任に関する指標を定期的に見直し、課題があれば迅速に対応する体制を整えましょう。このプロセスを繰り返すことで、企業の活動はより効果的で信頼性の高いものとなり、競争優位性をさらに強化することが可能です。
こうした取り組みを企業全体で推進することで、サステナブルなブランド戦略は単なる施策ではなく、持続可能な成長を支える企業文化として確立されます。

まとめ
2025年、BtoBの製造業でも、取り組むべきサステナブルなブランド戦略は、単なる環境対応を超え、企業の未来を左右する重要なテーマになります。
消費者意識の変化や規制強化に対応し、「循環型経済」「再生可能エネルギー」「エシカルサプライチェーン」「輸送プロセスの最適化」といった、具体的な取り組みを実践することが求められているからです。
そして今後、BtoB製造業にとって、取引先にとってのエシカルなサプライチェーンとして組み込まれることは、最も重要な生存戦略になっていくことでしょう。
こうした取り組みを支えるのが、サステナブルなデザインの力です。Webデザインや展示ブースなどの工夫を通じて、社外に信頼感と共感を与えることで、ブランド価値を高めることが大切です。
また、成功企業の事例からもわかるように、サステナビリティを戦略の中核に据えることは、長期的な成長と競争優位性の鍵となります。
企業全体で取り組みを推進し、社員教育や透明性の確保、持続的な改善プロセスを整えることで、サステナブルなブランド戦略は企業文化として定着します。
これにより、製造業は地球環境と社会への貢献を果たしながら、次世代に向けた持続可能な企業の未来を築くことができるでしょう。
